相続人がいない場合の片付け方
- 弁護士 仲林茂樹

- 11月4日
- 読了時間: 3分
弁護士の仲林です。
今回は、方向を変えて相続人がいない場合のお話です。
今の民法の相続に関する部分は、終戦後に制定された法律です。
(だから、個人が相続人として承継し、戸主や本家分家などという表現は有りません。)
世界の相続制度は大きく分けて2系統になります。
その一つが、日本における、子どもなどに相続人としての地位を付与し、当然に承継するという考え方です。
もう一つが、アメリカや香港のように、本来遺言や契約などで、承継者を定めておくのが前提で、それがない場合は、裁判所が関与して財産を整理するという考え方です(正確な表現ではないです、概ねの考え方という程度です。)。
実は、戸籍制度という物自体が全世界で採用されているわけではなく、戸籍のような簡単に親族関係がわかる書類そのものがないという国もあるのです。
海外に財産を保有しているという人は、それなりに多いと思いますが、相続のときには一気にややこしくなります。
(日本の相続法が海外で通用するわけではないという問題があります。)
さて、相続人がいない(相続放棄の結果、相続人がいない場合も含めて)場合、本来財産はどうなるのか、この精算処理が問題となるのですが実は、相続財産清算人制度というものがあります。
相続人がいない場合、本来、残された財産(負債も含めて)は、相続財産法人というものになります。
(たまに、◯◯財団というのを見ることがありますが、それと同じです。)
ただ、この相続財産法人、財産しかないので、身動きする人がいません。
そこで、代表を務める社長が必要となりますが、この代表が相続財産清算人という人になります。
もっとも、選任される相続財産清算人もただでは動けないので、申立時には大体100万円の予納金を求められます(この予納金は、相続財産が形成できたら返金されます。できなければ、返金されない場合や一部返金に終わる場合もあります。)。
そうすると、最悪100万円負担してでも申し立てする覚悟がいるので、そもそも必要性がないのであれば、放置されるというのも多々存在するということになります。
さて、選任後、相続財産清算人は、財産(預金などの財産と、借金という負の財産も含めて)を調査の後、借金を返して、残った財産があるなら国に帰属させ、財産がなくなれば、そこで手続きが終了させることになります。
このように、一応法律としては、相続人がいないということも予期して、制度設計をしているところではありますが、現実には、放置されることも多いというのが実情です。
また、資産を有するが、相続人がいない人が亡くなったという場合、現実のところ、預金は休眠口座、株式は所在不明株主として処理されます。
しかし、本質的には、国庫に帰属するということになるので、全額税金と同じになると考えると、もったいないということになりますが、一方資産がなくなるのも困るというジレンマが発生してしまいます。
こんなときには、遺言書で、誰に遺贈するかと決めておくことで、少なくとも国に帰属するというのは回避できそうです。
しかし、遺言書の書き方や内容は、一義的に明示しなければならないので、専門家に依頼するほうがいいのは間違いないです。
日本人は、直接表現すると角が立つので、婉曲に趣を込めて表現することが多いのですが、こと遺言書において婉曲表現は、トラブル表現そのものとなります。
私も、遺言書の内容が、周辺事情からみて、このような意味だろうとは思うけど、表現が趣のある表現なので、困ったことがあります。
今回は、相続人がいない場合の処理でした。






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