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相続と争族

  • 執筆者の写真: 弁護士 仲林茂樹
    弁護士 仲林茂樹
  • 2024年6月30日
  • 読了時間: 3分

弁護士の仲林です。

相続放棄の案件は、それなりに、受任するのですが、実は、相続放棄のその後の処理が不十分となる場合があるのでここで説明できたらと思います。

 

相続放棄は、相続人ではなかったことにしてほしいという手続きです。

家庭裁判所に「申述」という手続きが必要ですが、基本的に相続放棄という手続きそのものは複雑ではありません(私のところに来るのは、実は結構ややこしい問題がある例外的な相続放棄が多いですが、それは今回のコラムでは関係ないのでおいておきます。)。

 

相続放棄の申述(相続放棄しますという表示)が家庭裁判所に受け付けられると、確かに原則として、相続人ではないということになり、財産も、借金も引き継ぐことはありません。

たしかによかった、という話なのですが、問題は、相続放棄の手続きをした事実を、どこに記載するのかということです。

戸籍に、相続放棄の事実の記載がなされるというのであれば、今回のコラムは不要です。

ということは、相続放棄の事実は戸籍にも乗りませんし、ましてや住民票にも記載されることはありません。

実は、相続放棄を申し立てた家庭裁判所の記録に綴りこまれるだけなのです。

保存期間は30年のはずですので、結構長期に保存してくれます。

 

相続人の方に権利を請求する債権者などは、戸籍から、相続人を探し出して請求してくるので、戸籍には相続放棄の事実が記載されない以上、相続人の方が相続放棄をしたのかはわからないのです(私も債権者側で請求したことがあります。)。

これが、相続放棄をして、すぐの段階であれば、相続放棄をした人は、相続放棄申述受理証明書を家庭裁判所からもらっているので、(1通だけですが。)それの写しを出せばいいでしょう。

しかし問題は、結構な年数が経過してから請求された場合や、相続放棄をした人が相続放棄をしたあとで亡くなられた場合、相続放棄申述受理証明書をなくしてしまう場合があるのです。

その場合は、再度相続放棄を行った裁判所に申し出れば、再発行(名前は変わりますが、効果は同じ)してくれますが、問題は、裁判所の場所もわからない(裁判所は、相続放棄の対象となる相続される人(死亡者)の最後の住所を管轄する家庭裁判所が担当するので、わからなくなる場合もあります)。

この場合、最悪、また相続放棄の手続きを行うほかはないと思います。

いやいや、流石にそんなことはないでしょう、長年経ってからなにか言ってくる債権者なんていませんよとお思いの方、原則正しいのですが、ただし今後は所有者不明不動産(空き家不動産)という問題があります。

所有者不明の建物や、土地について、行政側が相続人を探し出して、危険な建物なので、解体を求めてくるというなんとも言えない請求がなされる場合があるのです。

この場合、行政は戸籍を収集して、相続人に建物の保全に対処しなければ、行政で対処するが、その場合、かかった費用を請求するよという通知を行ってきます。

行政としては、相続人の相続放棄の手続きに、文句を言いませんが、相続放棄をしたはず、と言われるだけでは、ハイそうですかとはなりません。

根拠を示す必要があるのです。

この場合、過去の相続放棄申述受理証明書を保管していないと、また面倒なことになるのです。

したがいまして、相続放棄を行ったから、完了ではなく、相続放棄申述受理証明書は、しっかり長期保存しておかなければいけません。

相続放棄は、単に目の前の相続の問題ではなく、場合によっては、結構時間が立ってから、地面から湧き出るように問題が噴出する場合もありますよ、というお話でした。



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