終活での財産管理について
- 司法書士 多良七恵

- 2024年1月15日
- 読了時間: 4分
今回は、自分の財産管理をほかの人に頼みたい場合の方法をご紹介したいと思います。
・財産管理等委任契約とは
財産の管理をお願いする人(委任者)と財産管理をお願いされる人(受任者)が、財産管理についての委任契約を結ぶことで、受任者は委任者の代理人として、財産管理に必要な事務を処理することになります。判断能力があっても、身体機能が低下したり、事故や病気で体が不自由になり外出が困難となったりした場合、銀行や役所での手続きや日常の支払いを誰かに手伝ってもらう必要があるときに利用できます。
委任する内容は、法に反しない限り自由に決めることができます。ただ、包括的に何でもできるような内容の権限を受任者に与えてしまうと、勝手に財産を処分される危険性がありますので、限定しておく方が良いでしょう。
・任意後見契約とは
将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ、信頼できる人(任意後見人)との間で財産管理の在り方や、医療や介護などの手配についての取り決めをする契約です。契約締結には判断能力が必要ですが、判断能力の低下しない限り効力は発生しないため、判断能力のある間は財産管理を依頼することはできません。
・見守り契約とは
任意後見制度が始まるまでの間、支援する人と本人が定期的に連絡を取る契約を一般に見守り契約と言います。定期的に本人と連絡を取っておくと、任意後見を開始させるタイミングや時期について相談しやすいです。見守り契約の内容は、自由に決めることができますが、主に契約の目的や本人と支援する人の面談や連絡についての詳細、支援する人の義務などを記載します。
・信託(信託契約)とは
信託を設定する人(委託者)が、自分の有する一定の財産を別扱いとして、信頼できる人(受託者)に託して、名義を移転し、この託された人において、その財産を一定の目的に従って管理・活用・処分を行い、その中で信託の利益を享受する人(受益者)に信託財産を利用させあるいは運用益等を給付し、そして最終的には財産そのものを遺したい人(帰属権利者等)に引き渡し給付して、その目的を達成する法制度である、とされています(前回のブログより引用)。信託を利用すれば、判断能力のあるうちの財産管理から、判断能力低下後の財産管理、さらに本人の死後の資産承継についても一つの契約で実現させることができます。
・死後事務委任契約とは
自分の死後に生じる手続きを第三者にしてもらうように定める契約を言います。これも原則として自由に定めることのできる契約で、委任契約の一種です。決める事項としては、自分が死んだときに誰に連絡するか、葬儀の手続きやお墓や永代供養はどのようにしてほしいか、医療費・施設使用料などの費用の清算についてなどです。この契約単体で結ぶこともできますが、この契約は、他の上記の契約に追加、付随して決めておくイメージで、先述の財産管理等委任契約の特約事項として、死後事務委任契約を含める方法も考えられます。
+遺言
遺言とは、生前に自分の死後、どの財産を誰に、どのような形で、どれだけ渡すかという最終の意思表示をするものです。民法の規定によると、遺言は、遺言者の意思を尊重するため、法定相続分の規定に関わらず、共同相続人の相続分を決められます。
死んでからのことは考えたくない、家族がどうにかしてくれるだろうと考えておられたり、家族が遺言を書くことを進めたら、早く死んでほしいのかなどと険悪になったりするような話をたまに聞きます。しかし、事前に意思を明確にしておくことは相続争いを防ぐことに繋がります。(遺言の説明について今回は割愛します。)
例えば、
見守り契約+任意後見契約(+遺言)
見守り契約+任意後見契約+死後事務委任契約(+遺言)
財産管理等委任契約+任意後見契約(+遺言)
財産管理等委任契約(死後事務委任を入れて)+任意後見契約(+遺言)
信託(+遺言)
信託+死後事務委任契約(+遺言)
など、信託契約も、遺言も、それだけでも対策にはなりますが、ご自身の状況、必要な支援の程度や期間、費用等を総合的に考えて、組み合わせて利用することがより有用です。






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